中国ロボット修理・保守市場の現状|深セン9Sセンターを訪問

中国ロボット修理・保守市場の現状|深セン9Sセンターを訪問

深センではロボットのレンタル需要が増える一方で、故障した機体の修理を担う第三者修理業者や技術者研修も育ち始めています。2026年9月の央視財経(CCTV財経)の報道によると、深セン・龍崗区のロボット6S店ではレンタル注文が平日より50%増え、週40〜50件に達しました。

本記事では、この報道に株式会社ロボットワークスが訪問した華強北の9Sサービスセンターでの確認内容を加え、日本企業が中国製ロボットの導入を検討する際に見ておくべき論点を整理します。本記事は2026年9月29日時点の情報に基づきます。

目次

深センでロボットのレンタルと故障が同時に増えている

ロボット6S店とは、自動車の4S店(販売・部品供給・アフターサービス・情報フィードバック)に、レンタル(Lease)とカスタマイズ(Customized)を加えたロボット向けの販売・保守拠点です。深セン市政府の発表によると、この店舗は2025年7月28日に龍崗区坂田街道の星河WORLD園区で開業しました。店内には、サーボモーターや高精度減速機などの部品を扱う部品売り場があり、開業時点でレンタルできる機種は十数種、最も安いものが1日1,000元と紹介されています(出典:深セン市政府発表、2025年7月29日)。

央視財経の2026年9月26日の報道では、同店のレンタル注文は平日より50%増え、週40〜50件に達しました。注文のなかで最も人気なのは、イベントなどで使うパフォーマンス用途のロボットです(出典:央視財経/澎湃新聞、2026年9月26日)。

同じ報道は、故障についても具体例を挙げています。バッテリーの劣化やデータ調整といった軽微なものはエンジニアが現場で対応できる一方、下位層のシステムに関わる不具合はメーカーへの返送が必要とされています。後方宙返りの着地に失敗して脚部の構造が破損した事例もあります。華強北の第三者修理業者はケーブル、コンデンサー、モーターの交換といった緊急修理を請け負っていますが、下位層の制御システムと暗号化チップはメーカーが握っているため、第三者では対応できない領域が残ります(出典:同上)。

稼働台数と稼働時間が増えれば、故障と部品交換が増えるのは避けられません。ロボットが展示用から実用品に移れるかどうかは、修理・保守・部品供給の体制が整うかに左右されます。

華強北の9Sサービスセンターとは

9Sサービスセンターとは、ロボットなどのAIハードウェアを販売するだけでなく、販売後のアフターサービスや技術者育成まで一つの拠点で担うことを目指す施設です。

深セン市福田区政府の発表によると、2026年3月18日に華強北で開設され、汪星人科技、銀河領航、楽易収などが共同で立ち上げました。ロボット、ドローン、外骨格装置、3Dプリンターなどを扱います。9Sは、製品販売(Sale)、二次開発(Secondary Development)、用途別ソリューション(Scene Solution)、アフターサービス(Service)、技術者研修(School)、研学教育(Study Tour)、サプライチェーン支援(Supply Chain)、システム支援(System Support)、創業支援(Start-up Incubation)の9つを指します(出典:深セン市福田区政府発表、2026年3月19日)。

華強北は、スマートフォンやドローンなどの電子機器について、部品販売のほか、故障診断、基板修理、部品交換、改造、小ロット調達まで担ってきた産業集積地です。壊れたら直す、部品を探す、別の用途に改造するといった作業が一つの地域で完結しやすいことが特徴で、その土地に人型ロボットや四足ロボットの修理拠点ができたことになります。

現地訪問で確認したこと

株式会社ロボットワークスは2026年7月、この9Sサービスセンターを訪問しました。開設から数か月後のことで、ロボットの分解・修理を学ぶスクールで実際に学んでいる方に依頼し、施設を案内していただきました。現地では、UnitreeやENGINE AIのロボットが置かれており、人型ロボットの分解・組み立て・修理を通じて内部構造を学べる環境を確認しました。

展示会で完成した状態のUnitree G1を見ても、確認できるのは外から見える歩行や動作までです。外装の内側で、モーター、減速機、関節機構、配線、制御基板、バッテリーがどう配置され、どこで接続されているかは分かりません。分解された状態を見ると、関節は一つの部品ではなく、モーター、減速機、エンコーダー、ドライバー、ベアリングなどの組み合わせでできていることが確認できます。

当社は、中国のヒューマノイドロボット産業を理解する手段として、完成機メーカーの訪問に加えて、分解・修理の現場を見る価値があると考えています。故障箇所を見ることは、製品の弱点と部品の調達構造を見ることにつながるためです。

もう一つ印象に残ったのは、華強北の電気街の大通りに、ロボット修理を学べるスクールの広告が堂々と掲出されていたことです。当社は深センに拠点を置いて現地を歩いていますが、修理という後工程が街の広告に出てくる段階に入ったことは、報道の数字以上に、市場が動いていることを肌で感じた点でした。訪問は7月で、レンタル増加を伝える9月の報道より前です。修理・研修の需要は、報道で顕在化する前から街の側では見えていたことになります。

修理技術者の研修と、100億元という数字の読み方

修理需要に合わせて、修理技術者を育てる研修も始まっています。央視財経の報道では、深センの研修機関の3つのコースが紹介されています。機関名は報道中に記載がありません。

コース期間料金
基礎(分解・組み立て)12日間8,000元
総合修理20日間12,000元
実践35日以上18,000元
出典:央視財経/澎湃新聞(2026年9月26日)

実践コースは、実際の顧客から持ち込まれた故障機を教材にするとされています。新人の給与は月7,000〜8,000元程度が大半で、インターネット上にある月収2万元という説には、業界関係者が慎重な見方を示しています(出典:央視財経/澎湃新聞、2026年9月26日)。

研修内容の参考として、深セン市の華航職業技能培訓センターが公開するロボット上級コースのカリキュラムを見ると、人型・四足ロボットの組み立てが62.5時間、精密はんだ付け・基板チップレベルの修理が55時間、ロボットの電気回路知識が35時間と設定されています。Unitreeのリモコン操作やG1の基本操作も記載されています。なお、同センターが央視財経の報道に登場した研修機関と同一かどうかは確認できていません(出典:華航職業技能培訓センター公開カリキュラム)。

報道の見出しにある100億元という数字には注意が必要です。この数字は、修理・保守だけの市場規模ではありません。央視財経の記事は、2026年の国内ロボットレンタル市場が100億元を超える見込みという予測を引用しています。同様の予測は調査会社のiiMedia Research(艾媒諮詢)も2026年3月に公表しており、2025年の約10億元から10倍になるとしています。いずれも予測値で、実績ではありません。

同じiiMedia Researchの資料は、レンタル事業の課題として、機器の年間減価償却率が20〜30%と高いこと、ヒューマノイドロボットは保証期間が過ぎると核心部品の修理費が数千元以上かかること、その修理費をレンタル事業者が負担することを挙げています(出典:iiMedia Research、2026年3月20日)。レンタルの拡大が、修理・保守の需要を押し上げる構造がここから読み取れます。

日本企業が導入前に確認すべき論点

自動車産業は、完成車メーカーだけでなく、ディーラー、整備工場、部品メーカー、中古車、保険を含めて成り立っています。ロボットも普及が進めば同じ構造が必要になります。中国製ロボットの導入を検討する際は、台数や性能に加えて、次の5点を確認する必要があります。

  • 故障したとき、誰が修理するのか(メーカー、代理店、第三者修理業者)
  • 交換部品が入手できるか、入手までの日数はどの程度か
  • 復旧までに何時間、何日かかるか
  • メーカー以外でも修理できる範囲はどこまでか(下位層の制御システムや暗号化チップはメーカー依存になり得る)
  • 保守費用がいくらかかるか(保証期間後の核心部品を含む)

展示会やデモの完成度だけでは、これらは分かりません。株式会社ロボットワークスは、中国フィジカルAI・ロボット領域に特化し、日本企業向けに市場調査・企業視察・企業ヒアリング・導入検討を支援しています。深センを拠点に、ロボット企業、工場、ショールーム、導入現場、サプライチェーン関連施設を訪問し、現地で情報を確認しています。

中国ヒューマノイドロボットの出荷実績と導入判断の前提はヒューマノイド1000億台予測と出荷実績の差、メーカー選定の審査面は中国ヒューマノイドロボットのIPO審査厳格化、深センでの視察の進め方は建設・住宅業界の人手不足を深センで検証で整理しています。修理・保守を含む導入前の確認は、中国企業視察・現地調査とロボットのPoC・導入検討支援でも承っています。

よくある質問

Q. 中国製ヒューマノイドロボットが故障した場合、誰が修理しますか。

報道ベースでは、ケーブル、コンデンサー、モーターの交換などは華強北の第三者修理業者が対応できる一方、下位層の制御システムや暗号化チップに関わる不具合はメーカーへの返送が必要とされています。導入前に、メーカーの修理体制と第三者修理の可否を確認することが重要です。

Q. 100億元は、中国のロボット修理市場の規模ですか。

いいえ。100億元は、2026年の中国国内ロボットレンタル市場が到達するという予測値で、修理・保守だけの規模ではありません。ただし、レンタルの拡大は稼働率を高め、修理と部品交換の需要を増やします。

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株式会社ロボットワークスは、中国・深センを拠点に、日本企業向けの市場調査、企業視察の設計・同行、中国企業へのヒアリング、導入検討支援を提供しています。具体的な視察先や依頼内容が決まっていない段階でもご相談いただけます。

参考出典

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この記事を書いた人

Makoto Yoshikawaのアバター Makoto Yoshikawa 代表取締役

株式会社ロボットワークス 代表取締役。中国・深圳と日本を拠点に、中国ロボット企業の日本市場展開支援、中国フィジカルAI・ロボティクス市場の現地リサーチ、企業訪問・視察企画、ビジネスマッチング、ロボティクス関連製品の販売支援を行う。ヒューマノイドロボット、サービスロボット、AIハードウェア、ロボット部品などの現地動向を継続的に調査し、日本企業向けに実務的な情報発信と事業開発支援を提供している。

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