深センのAI眼鏡店eyekuとは?11.2㎡店舗を現地調査

深センのAI眼鏡店eyekuを現地確認|11.2㎡の店舗設計

2026年9月20日、株式会社ロボットワークスは深セン市龍崗区の商業施設COCO Worldでeyekuを現地確認しました。eyekuは、眼鏡の検査やフレーム選びなどをAIと自動機器で支援する「AI配鏡」の店舗サービスです。

本記事では、店舗で実際に確認した構成と公開情報を整理したうえで、日本企業が小売・サービス業の省人化を検討する際に確認すべき論点をまとめます。結論から言えば、この店舗で注目すべきなのはロボットアームそのものではなく、眼鏡店の業務を分解して11.2㎡へ再構成した店舗設計です。本記事は2026年9月23日時点の情報に基づきます(現地確認日:2026年9月20日)。

目次

この記事の要点

  • 龍崗区政府の2026年4月発表では、約11.2㎡の「AI智能配镜太空舱」を商業施設などへ設置する構想が紹介されています。
  • 深セン特区報の2026年6月の展示会報道では、約30分の配鏡プロセスと、異常データを遠隔の検眼師が二次確認する運用が紹介されました。
  • 2026年9月20日のCOCO World現地確認では、ロボットアームが収納棚から眼鏡フレームを取り出す動作を確認しました。
eyeku店舗内の全自動検眼機器と案内ディスプレイ、自動検眼モジュール
eyeku店舗内の検査エリア。左が眼部データを取得する検査機器、右がロボットアームを備えた自動検眼モジュール(深セン市龍崗区COCO World、2026年9月20日、株式会社ロボットワークス撮影)

eyekuとは|深センの眼鏡メーカーが始めたAI配鏡サービス

eyekuとは、深セン市慧明眼镜有限公司が2026年3月に発表したAI視光ブランドで、視力・眼部データの取得、フレーム選択、試着、注文までの一連の眼鏡購入プロセス(中国語では配鏡)を、小型の店舗内で完結させることを狙ったサービスです。

慧明眼鏡は1999年設立の深セン企業です。公式サイトによると敷地面積は約1万6,000㎡、従業員は約500人で、眼鏡フレームの研究開発、製造、販売を手掛けています(出典:深圳市慧明眼镜有限公司)。AIスタートアップが眼鏡市場へ新規参入したのではなく、長年眼鏡を製造してきた企業が既存事業へAIを組み込んでいる点が、この事例の特徴です。

龍崗区人民政府の発表によると、同社が開発したAI智能配镜太空舱(ポッド型の小型店舗)の占有面積は約11.2㎡で、商業施設、高速鉄道駅、空港、オフィス、病院などへの設置を想定しています(出典:龍崗区人民政府)。

11.2㎡の店舗で検査から注文まで進める

eyekuの特徴は、一般的な眼鏡店が店舗内で行っている複数の業務を、小さな空間へ集約していることです。

龍崗区人民政府によると、AI智能配镜太空舱には裸眼3D動態視機能検査、全自動機械検眼モジュール、多次元の眼光学アルゴリズムが組み込まれています。客観的な屈折検査だけでなく、視機能の評価まで複数の工程を一体化する構成です。

深セン特区報は2026年6月、システムが眼軸長や角膜曲率など17項目の屈折・眼健康データを取得し、顔の3DスキャンとAIを使ってフレームを推薦すると報じています。利用者が選んだフレームは、ロボットアームが収納棚から取り出します(出典:深セン特区報)。

同じ報道では、注文までの配鏡プロセスを約30分で行い、注文後は2日以内に商品を届ける運用が紹介されています。従来の眼鏡店が店内に抱えていた機能と、eyekuでの担い手を並べると、構成の違いがはっきりします。

眼鏡店の機能従来の担い手eyekuでの担い手
検査・眼部データ取得店内の検眼スタッフ全自動検眼モジュール(17項目のデータ取得)
フレーム推薦販売員の接客顔の3DスキャンとAIによる推薦
試着実物を順に試すバーチャル試着と実物の提示
商品の取り出し販売員が棚から探すロボットアーム
専門判断・例外対応店内の常駐専門家遠隔の検眼師による二次確認
レンズ加工店舗内または外部委託中央の加工拠点、2日以内に配送
出典:龍崗区人民政府および深セン特区報の公開情報と、2026年9月20日の現地確認にもとづき株式会社ロボットワークス作成

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フレームを取り出すのはHuayan Roboticsの協働ロボットアーム

眼鏡フレームの収納棚から商品を取り出すHuayan Roboticsのロボットアーム
収納棚から眼鏡フレームを取り出すロボットアーム(深セン市龍崗区COCO World、2026年9月20日、株式会社ロボットワークス撮影)

今回COCO Worldで確認した店舗では、収納棚から眼鏡フレームを取り出す部分に、中国のロボットメーカーHuayan Robotics(華沿ロボット)のロボットアームが使用されていました。

Huayan Roboticsは協働ロボット(人と同じ空間で安全に動かすことを前提とした産業用ロボット)を中心に展開する中国企業です。ElfinおよびElfin-Proなどのシリーズを持ち、製造業だけでなくニューリテールやサービス業も応用分野として掲げています(出典:Huayan Robotics)。なお、現地で確認したアームの正確な型番、先端のグリッパーの供給元、eyeku向けのカスタマイズ範囲は、現時点では未確認です。

このロボットは高度な接客をしているわけではありません。人間が数百本の眼鏡の中から指定された商品を探して取り出す代わりに、決められた場所から商品を取り出すという限定された物理作業だけを担っています。派手な用途ではありませんが、実際の店舗運営では動作が安定し、故障時の影響範囲も限定できるため、現実的な使い方です。

完全無人の眼鏡店ではありません

eyekuを完全無人の眼鏡店と表現するのは正確ではありません。

深セン特区報が2026年6月に取材した運用では、11.2㎡の店舗に1人の現場補助スタッフを配置し、異常なデータが出た場合には遠隔の検眼師が二次確認する仕組みが紹介されています。人間を店舗からすべて取り除くのではなく、標準化できる作業をAIと機器へ移し、専門家の判断が必要な仕事だけを人間に残す設計です。

検査機器の操作、フレーム推薦、商品の検索と取り出しを自動化できれば、専門人材をすべての店舗へ常駐させる必要性は下がります。逆に言えば、遠隔検眼師が介入する条件と応答速度が、この店舗モデルが成立するかどうかを左右します。

注目点は眼鏡店を11.2㎡へ縮めた店舗モデル

今回現地で見て最も興味深かったのは、ロボットアームではなく店舗の分解の仕方でした。

従来の眼鏡店には、商品展示、在庫、検眼、接客、フレーム選択、レンズ加工など複数の機能が一つの店舗に集まっています。eyekuはそれを一度分解し、データ取得は計測機器へ、フレーム推薦はAIへ、商品の取り出しはロボットへ、例外的な専門判断は遠隔の人間へ、レンズ加工は後方の加工拠点へ移しています。そして顧客が現地で行う必要のあることだけを、11.2㎡の店舗に残しています。

龍崗区人民政府も、eyekuを従来型眼鏡店の在庫負担と運営負担の重さに対する対応策として紹介しています。単なるAI眼鏡店やロボット眼鏡店として見るよりも、小型の分散店舗と中央化された専門機能・加工・物流を組み合わせた店舗モデルとして見る方が、実態に近いと考えられます。

深センでは既存産業がAIとロボットを取り込み始めています

eyekuが生まれた龍崗区は、長年にわたって眼鏡産業が集積してきた地域です。龍崗区は現在、眼鏡産業のAI活用とデジタル化を政策的に進めており、2026年上半期の政府資料でも慧明眼鏡のAI智能配镜太空舱が眼鏡産業の事例として挙げられています。

中国のAI・ロボティクスというと、新興スタートアップに注目が集まりがちです。しかし現地では、既存の製造業やサービス企業が、自社の産業知識、サプライチェーン、顧客基盤にAIとロボットを組み合わせる動きも進んでいます。eyekuの場合は、眼鏡メーカーとしての製造基盤に、視機能・光学技術、AI、ロボットアーム、中央加工、物流を組み合わせています。

深センを見る際には、どの会社が新しいロボットを作ったかだけでなく、既存産業の中にAIとロボットがどのように組み込まれているかを確認することが、導入検討の材料として有効です。

日本企業への示唆|ロボットを選ぶ前に業務を分解する

この事例から日本企業が参考にできるのは、特定のロボット製品ではなく、業務の分解方法です。サービス業の省人化を検討する際、どのロボットを導入するかから考え始めると、ロボットを置くこと自体が目的になりやすくなります。

先に整理すべきなのは、次の5点です。

  • 人間でなければできない仕事はどれか
  • 機械で計測できる仕事はどれか
  • AIに推薦・判定させられる仕事はどれか
  • 遠隔化できる専門業務はどれか
  • 最後に残る物理作業のうち、どこをロボット化できるか

eyekuでは、この分解の結果として、収納された眼鏡を取り出すという明確な物理作業だけがロボットアームに割り当てられています。導入コストと故障時の影響を見積もりやすいのは、このように作業範囲を絞った構成です。

株式会社ロボットワークスは、中国フィジカルAI・ロボット領域に特化し、日本企業向けに市場調査、企業視察、企業ヒアリング、導入検討を支援しています。中国のロボット企業やAIハードウェア企業を見る際も、製品スペックだけでなく、実際にどの工程へ組み込まれ、どの仕事を置き換えているのかを現地で確認しています。今回のeyekuについては、次回は利用者として検査から注文までを体験し、常駐スタッフの役割、遠隔検眼師の介入条件、実際の所要時間、ロボット停止時の運用を確認する予定です。

よくある質問

eyekuは無人店舗ですか?

完全な無人店舗ではありません。報道によると11.2㎡の店舗に現場補助スタッフが1人配置され、検査データに異常があった場合は遠隔の検眼師が二次確認します。自動化されているのは検眼、フレーム推薦、商品の取り出しです。

中国のAI店舗やロボット活用店舗を実際に見学できますか?

可能です。株式会社ロボットワークスでは、訪問目的と検証したい仮説を整理したうえで、深センを中心にロボット企業、無人店舗、AI小売、サービスロボットの現場を組み合わせた視察を設計しています。

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参考出典

中国のスマート店舗・ロボット活用の調査/視察をご検討の方へ

株式会社ロボットワークスは、中国・深センを拠点に、日本企業向けの市場調査、企業視察の設計・同行、中国企業へのヒアリング、導入検討支援を提供しています。ロボット企業だけでなく、無人店舗、AI小売、サービスロボット、自動配送といった社会実装の現場を組み込んだ視察・現地調査を設計します。具体的な視察先や依頼内容が決まっていない段階でもご相談いただけます。

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この記事を書いた人

Makoto Yoshikawaのアバター Makoto Yoshikawa 代表取締役

株式会社ロボットワークス 代表取締役。中国・深圳と日本を拠点に、中国ロボット企業の日本市場展開支援、中国フィジカルAI・ロボティクス市場の現地リサーチ、企業訪問・視察企画、ビジネスマッチング、ロボティクス関連製品の販売支援を行う。ヒューマノイドロボット、サービスロボット、AIハードウェア、ロボット部品などの現地動向を継続的に調査し、日本企業向けに実務的な情報発信と事業開発支援を提供している。

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