広州で2027年4月、人型ロボットのバスケットボール大会RBA開催へ|5競技が試す技術とは

広州で2027年4月、人型ロボットのバスケットボール大会RBA開催へ|5競技が試す技術とは

2026年9月29日、中国・広東省が人型ロボットによるバスケットボール大会「国際人形机器人篮球挑战赛」(以下、RBA)を2027年4月中上旬に広州で開催する方針を発表しました。ただし、RBAは5対5の試合ではなく、フリースローやドリブルなど5種目で人型ロボットの総合性能を測る技術競技会です。本記事では、競技の中身、背景にある技術課題、競技成績と実用性の違いを整理したうえで、日本との接点としてトヨタの「CUE」とその研究動向を取り上げます。

本記事は2026年10月2日時点の公開情報に基づきます。大会はまだ開催前であり、当社が現地で確認した内容は含みません。詳細ルールは今後変更される可能性があるため、大会開催後を含めて更新していきます。

目次

RBA(国際人形机器人篮球挑战赛)とは

RBAは、広東省人民政府が主催し、2027年4月中上旬に広州で開催が予定されている人型ロボットのバスケットボール競技会です。競技部門の5種目と、参加者が自由に演出を組む表演部門で構成されます。

発表は広東省科学技術庁の副庁長によるもので、中国メディアが2026年9月29日以降に報じました。大会の狙いとして、人型ロボットなど先端分野の産学研連携を深め、高い動的運動制御、環境認識、自律的な判断といった中核技術の突破を促すことが挙げられています。参加対象は国内外の企業、大学、研究機関、イノベーションチームなどで、単独でも連合でも参加できるとされています。

注意したいのは、現時点のRBAが「ロボットが5対5で試合をする大会」ではないことです。競技部門はあくまで個別の動作課題で構成されており、チーム同士が対戦する形式は示されていません。「ロボットがバスケをする」という言葉から試合を想像すると、実態を取り違えます。

5つの競技種目が試す技術

競技部門は、定点フリースロー、移動3ポイント、人・ロボット協調パス、ドリブル耐久、ドリブル障害物回避レイアップの5種目です。中国語の公式表記では順に「定点罚球投篮」「移动三分球投篮」「人机协同传接球」「原地运球耐力赛」「运球避障上篮」とされています。

公式発表は各種目の採点方法まで詳しく示していません。そのため、下の表は各種目が一般的に必要とする技術を当社が整理したもので、主催者の公式見解ではありません。

種目試される主な技術(当社の整理)
定点フリースローゴールとボールの視覚認識、投射動作の再現性、ボールの把持と離す瞬間の制御
移動3ポイント移動しながらの姿勢安定、移動後の位置推定、距離に応じた投射の調整
人・ロボット協調パス人の動きの認識、受け取りと送り出しのタイミング調整、安全な接触の管理
ドリブル耐久跳ね返るボールの追従、接触力の制御、長時間動作での安定性
ドリブル障害物回避レイアップドリブルを続けながらの経路計画と回避、減速から跳躍的動作への切り替え、全身の協調

この5種目を並べると、バスケットボールという競技が目的ではなく、複数の技術要素を一度に試すための「題材」として選ばれていることが分かります。ボールは弾み、飛び、人の動きも読めません。固定された工場の治具や決まった搬送物と比べて、環境の変化が大きい題材です。

当社は、RBAを人型ロボットの総合技術試験として見ています。視覚認識、動的環境への対応、二足歩行、全身協調制御、ボール操作、人との協調、転倒後の自律復帰、そして認識から判断、動作までのリアルタイムループを、一つの環境で同時に試せるためです。どれか一つが弱いと得点に結びつかないため、システム全体の完成度が結果に出やすい構成だといえます。

競技部門の条件:双足と転倒後の自律復帰

競技部門の参加ロボットには、人型の身体構造を持ち、双足を唯一の歩行機構とすることが求められます。あわせて、双脚で直立して歩く能力と、転倒した後に自力で起き上がる動作が必須とされています。車輪やクローラーで移動する機体は、競技部門の条件を満たしません。

当社は、この条件は実用面でも意味のある選別だと見ています。車輪型は平地での移動効率や安定性で有利ですが、階段や段差のある環境を想定した人型の価値は、二足歩行でこそ試されます。さらに転倒後の自律復帰は、現場で人が毎回助け起こすわけにはいかないという運用上の現実に直結します。

一方の表演部門は、固定の動作や路線を設けず、参加者が派手なバスケットボール動作や隊形変化を自由に編成する形式です。こちらは下半身構造の制限がないとされています。ただし、競技部門の細かな規則や技術要求は、参加チームの実情や意見に基づいて適宜調整されると明記されています。種目や条件が今後変わる可能性があるため、最新の公式情報の確認が欠かせません。

中国でロボット競技会が研究開発の場になりつつある背景

中国では、人型ロボットの競技会が単なるイベントではなく、技術を試し、比較し、改善する場として使われ始めています。当社の代表は2026年8月、北京の国家速滑館で開催された「世界人型ロボット運動会2026」を2日間にわたって現地で取材しました。詳しくは世界人型ロボット運動会2026 現地レポート|北京で確認した事実と、日本での批判をどう見るかにまとめています。

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世界人型ロボット運動会2026 現地レポート|2日間で確認した事実と、日本での批判をどう見るか 2026年8月に北京で開催された第2回世界人型ロボット運動会を株式会社ロボットワークスが2日間現地取材。100m 8秒64の記録、全自律化したルール、2,056台を支えた運用基盤、2,500時間超のデータ公開と、日本での批判をどう見るかを整理します。

北京の大会は666チーム、2,056台のロボットが51競技に参加する規模でした。現地では、遠隔操作から全自律への移行、記録の大幅な更新、工場や物流などを想定したシーン競技の拡大といった変化を確認しています。複数のチームが共通の条件で課題に取り組む形式であることは、研究開発の場として見るうえで重要な特徴です。

ここまでは当社が北京で確認した事実です。ここからは当社の考察ですが、競技会には共通の課題と評価軸を示すことで、企業や大学の開発を一定の方向にそろえる働きがあると考えています。RBAのように題材を絞った競技は、その効果が出やすい形式です。バスケットボールは世界的に認知度が高く、成功と失敗が観客にも分かりやすいため、技術の到達点を外部に伝える手段としても使いやすいといえます。

なお、RBAはまだ開催前です。当社は広州の会場を確認していませんので、本記事の大会に関する記述はすべて公開された発表と報道に基づいています。

競技での高得点と、工場での実用化は別の話

RBAでの成績が良いロボットが、そのまま工場や物流現場で働けるとは限りません。競技会は、決められたルールと環境の中で一定時間の性能を測る場です。商用運用では、それとは異なる条件が重なります。

たとえば、数時間から数日にわたる連続稼働、故障や異常時の安全停止、保守の手間と部品交換、複数の種類の物体の取り扱い、周囲の作業者との安全な共存、そして導入費用に見合う作業効率です。競技の得点は、これらの多くを直接は測りません。バスケットボールのシュートが正確であることと、不定形の荷物を安全に運び続けられることは、必要な能力が重なる部分があるものの、同じではありません。

とはいえ、競技が無意味だという話でもありません。競技は、要素技術の水準を同じ物差しで比べられる点に価値があります。当社は、競技成績を「技術の到達度を測る一つの材料」として扱い、商用性能は別の基準で評価することを勧めています。大会の結果を見るときも、種目名と得点だけでなく、どの条件で、どの程度の再現性があったのかを確認する姿勢が大切です。

日本との接点:トヨタのバスケットボールロボット「CUE」

バスケットボールとロボットといえば、日本ではトヨタの存在が思い浮かびます。RBAの動向を日本の視点で見るうえで、トヨタは重要な比較対象です。ここでは、事実関係を混同しないように、CUEとトヨタの二足歩行研究を分けて整理します。

CUEの歩みとギネス世界記録

トヨタは2017年から、AIバスケットボールロボット「CUE」の開発を続けています。ギネス世界記録の公式ページによれば、2019年に第3世代の機体が人型ロボットによる連続フリースロー最多の2,020回連続を達成しました。さらに2024年9月26日には、愛知県長久手市で第6世代のCUE6が人型ロボットによる最長距離のバスケットボールシュートとなる24.55mを成功させています。

2,020回と24.55mは、同じ機体の記録ではなく、世代の異なるCUEによる記録です。2026年6月には後継の「CUE7」が発表され、「ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2026」で展示されました。身長219cm、重さ74kgで、ドリブル、パス、ロングシュートが可能と紹介されています。

一方で、CUEが今回のRBA競技部門の条件を、そのまま満たすとは言えません。少なくともCUE5では足元にメカナムホイールが使われており、CUE6も車輪による移動機能を備えると記載されています。RBA競技部門が求める「双足を唯一の歩行機構とする」条件とは前提が異なります。CUE7の移動方式については、本稿執筆時点で当社は確認できていません。

トヨタ未来創生センターの二足歩行・ドリブル研究

別の動きとして、トヨタ自動車の未来創生センターは2026年3月31日、二足歩行のヒューマノイド試験機を使った研究を公開しました。強化学習によって歩行とバスケットボールのドリブルを習得させる内容です。シミュレーション上で多数のロボットを並行して学習させ、歩行は1〜2時間で安定したと説明されています。

公開資料によると、実機に移す際には、センサーノイズや摩擦を変動させる「ドメインランダマイゼーション」や、実機のアクチュエーター特性にシミュレーションを合わせる「Real2Sim」を使っています。ドリブルでは、人間のモーションキャプチャデータを参照軌道に使い、カメラでボールを認識しながら実機でのドリブルを実現しました。一方で、カメラによる認識の誤差と遅れが実機の成功率に影響したことも、課題として明記されています。

研究担当者は、この枠組みをCUEに展開していく意向も示しています。ここで注意したいのは、この二足歩行の試験機とCUEが別の機体であることです。研究成果をCUEに生かす計画はあっても、試験機がCUEそのものになるわけではありません。

項目RBA競技部門の条件CUE(CUE5・CUE6)未来創生センターの二足歩行試験機
歩行機構双足が唯一の歩行機構CUE5はメカナムホイール、CUE6は車輪による移動機能二足歩行
公開されている成果(大会は2027年4月予定)連続フリースロー2,020回(2019年、第3世代)、24.55mシュート(2024年、CUE6)強化学習による歩行と、カメラ認識を使った実機ドリブル(2026年3月公開)
位置づけ競技会AIバスケットボールロボット歩行・ドリブルの研究用試験機

筆者の期待:トヨタにも広州のコートに立ってほしい

ここから先は事実ではなく、代表の吉川個人の意見です。個人的には、トヨタにもRBAへ出場してほしいと考えています。出るのであれば、ぜひ優勝を狙ってほしいと思っています。

理由は二つあります。一つは、トヨタが2017年から積み上げてきた投射精度や、AI制御の蓄積を、二足歩行の人型という共通の条件で、中国勢と同じ土俵で比べられる機会はそう多くないと感じるからです。もう一つは、結果がどうであれ、日本の技術の現在地を日本の産業界が自分の目で確かめられるからです。私は、中国勢とトヨタが2027年4月の広州で同じコートに立てば面白いと思っています。

なお、トヨタがRBAへの参加を表明した事実は、現時点で確認できていません。大会は国内外の企業の参加を認めていますが、出場するかどうかはトヨタ自身が判断することです。上の一文は、あくまで筆者の期待として書いたものです。

日本企業がRBAから読み取れる視点

RBAを、そのまま日本企業の導入判断に結びつけるのは早計です。それでも、新規事業や研究開発の担当者にとっては、確認しておく価値のある論点がいくつかあります。以下は当社の整理です。

  • どの企業・大学が参加するかを見ると、二足歩行の人型で、動的な操作まで扱えるチームの層の厚さが分かります。
  • 種目ごとの成功率や再現性は、要素技術の完成度を比べる材料になります。得点だけでなく、条件と試行回数の確認が欠かせません。
  • 競技会向けの機体が、量産や外販を前提にしているかどうかは、別に調べる必要があります。
  • 競技で使われた認識・制御の技術が、物流や製造のどの工程に近いのかを考えると、PoCの候補を絞りやすくなります。

株式会社ロボットワークスは、中国フィジカルAI・ロボット領域に特化し、日本企業向けに市場調査・企業視察・企業ヒアリング・導入検討を支援しています。競技会の結果を、導入や提携の判断に使える情報に整理することも、当社の調査の一部です。

よくある質問

Q. RBAはいつ、どこで開催されますか。

2027年4月中上旬に、中国・広州で開催される予定です。広東省人民政府が主催します。具体的な日程や会場の詳細は、今後の公式発表を確認してください。

Q. ロボットが5対5でバスケットボールの試合をするのですか。

いいえ。現時点で示されている競技部門は、フリースロー、移動3ポイント、人・ロボット協調パス、ドリブル耐久、ドリブル障害物回避レイアップの5種目です。試合形式の対戦は含まれていません。

Q. トヨタのCUEはRBAに出場できますか。

公開情報だけでは、出場できるかどうかは判断できません。競技部門は双足を唯一の歩行機構とすることを求めており、少なくともCUE5は足元にメカナムホイールを使っています。トヨタが参加を表明した事実も、現時点では確認できていません。

Q. バスケットボールができるロボットは、工場でも働けますか。

そうとは言い切れません。競技では、決められた条件での性能が測られます。工場では、連続稼働、安全性、保守、コスト、多様な物体への対応など、競技が直接測らない条件が加わります。競技成績は技術水準を知る一つの材料として、商用性能とは分けて評価する必要があります。

更新履歴と今後の更新予定

  • 2026年10月2日:初版公開(大会発表と報道、トヨタの公開資料に基づく)。

今後、公式ルールの更新、参加チームの公表、大会結果が出た時点で本記事を更新します。大会開催後は、結果と各チームの技術的な特徴を、事実と当社の考察を分けて追記する予定です。

参考情報

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株式会社ロボットワークスは、中国・深センを拠点に、日本企業向けの市場調査、企業視察の設計・同行、中国企業へのヒアリング、導入検討支援を提供しています。RBAのような競技会の動向も踏まえ、人型ロボットの中国企業の技術水準を調べたい、現地で実機を確認したい、PoCの候補企業を絞り込みたいといったご相談を承っています。具体的な視察先や依頼内容が決まっていない段階でもご相談いただけます。

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この記事を書いた人

Makoto Yoshikawaのアバター Makoto Yoshikawa 代表取締役

株式会社ロボットワークス 代表取締役。中国・深圳と日本を拠点に、中国ロボット企業の日本市場展開支援、中国フィジカルAI・ロボティクス市場の現地リサーチ、企業訪問・視察企画、ビジネスマッチング、ロボティクス関連製品の販売支援を行う。ヒューマノイドロボット、サービスロボット、AIハードウェア、ロボット部品などの現地動向を継続的に調査し、日本企業向けに実務的な情報発信と事業開発支援を提供している。

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