奥比中光(Orbbec)とは|2026年香港上場申請と事業を解説

奥比中光(Orbbec)とは|2026年香港上場申請と事業を解説

中国・深センの3Dビジョン企業、奥比中光科技集団股份有限公司(Orbbec Inc.、以下 奥比中光)は、2026年9月24日に香港証券取引所へH株の発行・上場申請を提出しました。同社はロボット向け3Dカメラ・深度センサーの有力企業であり、近年はフィジカルAIの学習データを集める機器や、ロボットOEM・量産支援へ事業を広げています。

本記事では、奥比中光の事業概要、2025年の業績、香港上場申請の位置付け、事業領域の拡大を整理したうえで、日本企業が中国ロボットのサプライチェーンを調査する際の論点をまとめます。

本記事は2026年9月28日時点の公開情報に基づきます。

目次

奥比中光(Orbbec)とは

奥比中光(Orbbec)は、2013年に深センで設立された3Dビジョン・AIビジョン企業で、ロボットが距離や形状を認識するための3Dカメラ・深度センサーを主力としています。

2022年7月7日に上海証券取引所の科創板へ上場しており、証券コードは688322です。通常のカメラが対象を平面の画像として捉えるのに対し、3Dカメラは対象物までの距離、奥行き、立体形状を取得できます。そのため、ロボットの障害物検知、自己位置推定、ナビゲーション、物体の把持・操作などで中核的な役割を担います。

同社は双眼ステレオ、ToF(Time of Flight)、構造光など複数方式の3Dカメラを展開しています。サービスロボット分野では、PUDU Robotics(普渡科技)、高仙机器人(Gausium)、雲迹科技(Yunji Technology)などへの提供実績を公式に紹介しています。

奥比中光の基本情報

項目内容
正式名称奥比中光科技集団股份有限公司(Orbbec Inc.)
設立2013年(中国・深セン)
上場市場上海証券取引所 科創板(2022年7月上場、688322)
主力製品3Dカメラ・深度センサー(双眼ステレオ/ToF/構造光)
ロボット関連顧客人型ロボットを含め1,000社超(会社発表)
2025年売上高9億4,074万元(前年比66.66%増)
2025年純利益(親会社帰属)約1億2,791万元(年間黒字化)
香港上場2026年9月24日にH株上場を申請(審査中)

人型ロボットを含む1,000社以上のロボット企業に提供

奥比中光の2026年の公式発表によると、人型ロボットを含む世界のロボット関連顧客は1,000社を超えています。人型ロボット関連では、2025年以降、四半期ごとの受注が前四半期比60%以上増加し、2026年第1四半期には前四半期比で倍増したとしています。

ただし、これは奥比中光が公表している受注に関する情報であり、最終的なロボットの販売台数や稼働台数を示すものではありません。一方で、人型ロボット市場の拡大が、完成機メーカーだけでなく視覚センサー企業にも需要を生んでいることは読み取れます。

中国の人型ロボット産業を把握するには、Unitree Robotics(宇樹科技)、UBTECH(優必選)、AgiBot(智元機器人)などの完成機メーカーに加え、センサー、減速機、モーター、ロボットハンドといったサプライチェーン企業の動向を確認する必要があります。

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2025年に初めて年間黒字化、ただし累積損失は残る

奥比中光の2025年売上高は9億4,074万元で、前年比66.66%増加しました。親会社株主に帰属する純利益は約1億2,791万元となり、上場後初めて年間ベースで黒字化しています。

一方で、2025年末時点でも過年度からの累積損失が約15億2,291万元残っています。会社自身も、3Dビジョン製品は一部の領域で規模化しつつあるものの、市場全体としては大規模普及の初期段階にあると説明しています。

2025年の黒字化は、事業が安定した成熟期に入ったことを意味するものではありません。今後は、人型ロボットやフィジカルAI市場の拡大を、どの程度継続的な売上と利益に結び付けられるかが焦点になります。

2026年9月、香港証券取引所へH株上場を申請

上海証券取引所の開示によると、奥比中光は2026年9月24日に香港証券取引所へH株の発行・上場申請を提出し、申請資料を公表しました。同社はすでに科創板に上場しているため、実現すれば中国本土と香港の双方に上場する「A+H」の形になります。

2026年9月28日時点では申請段階であり、上場の承認や上場日が決まったわけではありません。中国ロボット関連企業の香港上場は近年相次いでいますが、審査の厳格化も指摘されています(関連記事:中国ヒューマノイドロボットのIPO審査厳格化|確認すべき6項目)。

「ロボットの目」からフィジカルAIデータの領域へ

現在の奥比中光を見るうえで最も重要なのは、事業領域の変化です。同社は「ロボットの目」を提供する企業として成長してきましたが、現在は3Dカメラに加え、フィジカルAIの学習に使う実世界データを収集するハードウェアへ進出しています。

2026年には、EGO、UMI、WristCamなどから構成される「無本体データ収集ハードウェアプラットフォーム」を本格展開しています。ロボット本体を使わずに、人が作業する際の第一人称映像、手元映像、深度、IMU(慣性計測)、手と物体の相互作用などを記録し、VLA(Vision-Language-Action)モデルやロボット学習に利用する仕組みです。

また、2026年8月には世界モデル関連企業の厘清智能と提携し、3D深度データや視覚センサーとシミュレーション環境の位置合わせなど、世界モデルの学習データ品質向上に取り組むと発表しました。奥比中光は「カメラを販売する企業」から「現実世界をデータ化する企業」へ領域を広げつつあると整理できます。

ロボット学習用データの収集方式については、フィジカルAIの学習データとは?ロボットのデータ収集5方式で詳しく解説しています。

佛山の製造拠点とロボットOEMへの進出

奥比中光は製造領域にも事業を広げています。佛山に建設した3D視覚感知産業スマート製造拠点の第1期は延床13万平方メートル超の規模で、会社発表では年間1,000万台規模のセンサーと100万台規模のロボット端末の生産能力を持つとしています。

この数字は生産能力であり、実際に100万台のロボットを生産・販売したことを示すものではありません。同社は自社製品に加え、ロボット本体や部品のOEMにも対応しており、3D視覚、データ収集、製造をつなげることで、フィジカルAI企業向けのインフラ企業としての位置付けを強めています。

事業領域主な内容位置付け
3D視覚センサー双眼ステレオ/ToF/構造光カメラ従来からの中核事業
データ収集ハードウェアEGO、UMI、WristCamなどフィジカルAI学習データの取得
世界モデル連携厘清智能との提携(2026年8月)学習データ品質の向上
製造・OEM佛山スマート製造拠点、ロボット本体・部品OEM量産支援・受託製造

日本企業にとっての示唆

日本企業が中国ロボット企業を調査する際、完成したロボットだけを見ると産業構造を見誤る可能性があります。人型ロボットやAMRの性能は、本体メーカーだけで決まるものではありません。奥比中光の事例からは、次の論点が読み取れます。

  • 部品・センサー層の調査:カメラ、LiDAR、力覚・触覚センサー、減速機、モーター、ロボットハンドなどの供給企業が、完成機の性能とコストを左右します。
  • 学習データの調達先:フィジカルAIの学習データを集める機器やサービスは、センサー企業からも提供され始めています。データ取得の方法と品質基準の確認が必要です。
  • OEM・量産パートナーの選択肢:センサー企業がロボット本体のOEMまで手がけることで、試作から量産までを一社で相談できる可能性があります。
  • 開示情報の読み方:受注の伸び率や生産能力は、実際の出荷台数や稼働台数とは異なります。数字の定義を確認したうえで判断することが重要です。

共同開発、ロボット導入、センサー調達、フィジカルAIデータ収集を検討する日本企業にとって、完成機メーカーの周辺にあるサプライチェーン企業を直接調査する重要性は高まっていくと考えられます。

よくある質問

奥比中光(Orbbec)は何の会社ですか?

奥比中光は2013年に深センで設立された3Dビジョン企業です。ロボットやスマートデバイス向けに3Dカメラ・深度センサーを開発・製造しており、2022年から上海証券取引所の科創板に上場しています。

奥比中光の香港上場はいつですか?

2026年9月24日に香港証券取引所へH株上場を申請しました。2026年9月28日時点では審査中であり、上場日は決まっていません。

奥比中光は黒字ですか?

2025年に親会社株主に帰属する純利益約1億2,791万元を計上し、年間ベースで黒字化しました。ただし2025年末時点で約15億2,291万元の累積損失が残っています。

関連記事

参考情報

  • 奥比中光 公式サイト
  • 上海証券取引所「奥比中光 2025年年次報告」
  • 上海証券取引所「香港聯交所へのH株発行上場申請及び申請資料公表に関する公告」(2026年9月24日)
  • 奥比中光「無本体データ収集ハードウェアプラットフォーム」
  • 奥比中光「3D視覚感知産業スマート製造拠点」
  • 21世紀経済報道「機器人3D視覚一哥冲刺“A+H”」(2026年9月28日)

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株式会社ロボットワークスは、中国フィジカルAI・ロボット領域に特化し、日本企業向けに市場調査・企業視察・企業ヒアリング・導入検討を支援しています。深センを拠点に、ロボット本体メーカーだけでなく、センサー、ロボットハンド、関節、フィジカルAIデータ、製造企業を含む中国ロボティクス産業を調査しています。具体的な調査先や依頼内容が決まっていない段階でもご相談いただけます。

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この記事を書いた人

Makoto Yoshikawaのアバター Makoto Yoshikawa 代表取締役

株式会社ロボットワークス 代表取締役。中国・深圳と日本を拠点に、中国ロボット企業の日本市場展開支援、中国フィジカルAI・ロボティクス市場の現地リサーチ、企業訪問・視察企画、ビジネスマッチング、ロボティクス関連製品の販売支援を行う。ヒューマノイドロボット、サービスロボット、AIハードウェア、ロボット部品などの現地動向を継続的に調査し、日本企業向けに実務的な情報発信と事業開発支援を提供している。

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