Hai Robotics香港上場再申請|受注残41億元の実態

Hai Robotics香港上場再申請|受注残41億元の実態

2026年9月13日、Hai Robotics(海柔創新)の香港上場申請に関するApplication Proof(申請版本)が香港証券取引所に掲載されました。同資料は草案で、申請は上場承認前と明記されています。9月21日付の会社公告では、総合協調人の追加委任が公表されています。2026年上期の売上は前年同期比70.2%増、6月末の受注残は41.54億元です。本記事では、開示資料の数字とその読み方、日本企業が倉庫ロボットを導入検討する際の論点を整理します。

情報基準日:2026年10月3日。本記事は上場申請書類と公開情報に基づく企業動向の解説であり、投資の勧誘・推奨を目的としません。

目次

Hai Roboticsとは何か

Hai Robotics(海柔創新)は、2016年に深センで設立された倉庫自動化ロボット企業です。主力製品はACR(Autonomous Case-handling Robot、自律ケース搬送ロボット)と呼ばれるカテゴリーで、棚全体ではなくケースやトート単位で商品を取り出し、作業者のところまで搬送する仕組みを指します。

香港上場資料で引用されている調査会社の推計では、2024年時点で売上高・出荷量ともに世界最大のACR企業とされています。ただし、この数値は同社の上場資料に掲載された外部調査会社の推計であり、第三者が監査した販売実績そのものではない点には留意が必要です。

製品ラインナップは、初期モデルのHaiPick System 1から、高密度保管に対応したHaiPick System 3、2025年に投入されたラック昇降型のHaiPick Climbへと展開しています。

搬送ロボット本体に加えて、ワークステーションのHAISTATION、倉庫管理システムのHAIQ、充電システムのHAICHARGERなど、周辺システムまで含めたトータルソリューションとして提供している点が特徴です。同社によれば、2026年6月末までの累計契約プロジェクトは2,000件超、40以上の国・地域に展開しており、アパレル、EC、3PL(物流業務受託)、製造業など幅広い業種で導入が進んでいます。

日本法人HAI ROBOTICS JAPANの事業内容

日本国内の事業は、日本法人である株式会社HAI ROBOTICS JAPANが担っています。2021年8月25日設立で、本社は東京都大田区、資本金7,735万円、従業員数は60名です(公式サイトの会社概要による)。ACRを含む自動搬送車や周辺設備の開発・販売に加え、導入設計から現場での立ち上げ、導入後の保守までを一貫して提供するワンストップ体制を掲げています。

設立後の展開としては、2022年に東芝インフラシステムズ株式会社およびGaussy株式会社とパートナーシップ契約を締結し、設立1年の時点で国内7件・ACR100台以上を受注したと発表しています。2024年にはSBSグループの物流サービス「EC物流おまかせくん」にHaiPick Systemが採用されたほか、2026年5月にはコクヨの新設物流拠点「東北IDC」へのHaiPick Climb導入を発表しています。
国内の受注・提携実績は、単発の販売代理ではなく、物流事業者やSIer(システムインテグレーター)との継続的なパートナーシップを軸に積み上げられてきた点がうかがえます。

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受注残41億元の内訳と、まだ黒字化していない実態

Hai Roboticsの売上は2023年の8.07億元から2025年には20.17億元まで拡大し、2026年上期は11.18億元、前年同期比70.2%増となりました。新規受注も23.53億元(前年同期比48.8%増)に達しました。香港証券取引所の申請版本によると、6月30日時点の受注残は4,154百万元(41.54億元)です。

同申請版本では、受注残を「その時点で売上に転換されていない顧客注文の総額」と定義しています。会社は、受注残が将来売上を保証するものではなく、納入日程・顧客検収・プロジェクト計画の変更などにより売上計上の時期と金額が変わり得ると説明しています。また、履行済み注文の金額は税込、売上はIFRSに基づき税抜で認識されるため、両者は一致しません。

一方で、同じ2026年上期の純損失は4.31億元、株式報酬などを除いた調整後純損失でも2.08億元にのぼり、営業キャッシュフローも流出が続いています。粗利率自体は2023年の16.0パーセントから2026年上期は34.4パーセントまで改善しており、製品構成と海外売上の拡大が寄与しています。

つまり、受注や売上の伸びと、利益・現金が積み上がることは別の指標です。倉庫ロボットの導入には、レイアウト設計、製造、輸送、既存物流システムとの接続、検収、その後の保守までの工程が伴うため、受注が増えるほど先行して必要になる在庫や人員、設置費用も膨らみやすい構造があります。

指標2023年2025年2026年上期
売上8.07億元20.17億元11.18億元(前年同期比+70.2%)
粗利率16.0%31.2%34.4%
純損失10.09億元8.28億元4.31億元
受注残17.89億元30.87億元41.54億元
出典:香港証券取引所 Hai Robotics Application Proof(2026年9月13日)

Geek+との比較で見える競争軸の変化

同じ中国の倉庫ロボット企業であるGeek+(極智嘉)は2025年7月に香港上場済みで、2026年上期の売上は12.84億元、粗利率35.8パーセントとHai Roboticsに近い規模です。ただし調整後純損失はGeek+が6060万元まで縮小しているのに対し、Hai Roboticsは2.08億元です。

両社の海外売上比率はいずれも50パーセントを超えており、Geek+はサブスクリプション型サービスの受注を1.56億元まで伸ばしています。ロボット本体の販売台数だけでなく、導入後の保守・ソフトウェア収入で継続的に稼げるかどうかが、次の競争軸になりつつあります。

日本企業が導入検討で確認すべき論点

2026年5月には、Hai Robotics Japanがコクヨの新設物流拠点にラック昇降型製品を国内で初めて本格導入すると発表しています。日立製作所の物流制御システムと組み合わせ、生産性向上や棚卸工数削減が見込まれていますが、これは同社発表による見込み値であり、稼働実績の検証は今後の課題です。

中国の倉庫ロボットを検討する際は、価格や走行速度だけでなく、以下の観点を確認することを推奨します。

  • ピーク時の処理能力と保管密度
  • 平均故障間隔(MTBF)と平均復旧時間(MTTR)
  • 既存の物流システム(WMS・WCS)との接続性
  • 国内保守体制と交換部品の供給リードタイム
  • ソフトウェア利用料・年間保守費を含めた投資回収期間

デモで動作するかではなく、繁忙期に稼働し続けられるかという運用面の検証が、導入判断の分かれ目になります。

受注残41億元の中身、Geek+との財務構造の違い、ACRという製品カテゴリーの強みと限界については、noteの記事「売上70%増、受注残41億元。それでも赤字―Hai Robotics IPOで見えた倉庫ロボット商用化の現在地」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

よくある質問

Hai Roboticsとはどのような会社ですか

2016年設立の深セン発倉庫自動化ロボット企業です。ケース単位で商品を搬送するACR(自律ケース搬送ロボット)を主力製品とし、2026年9月に香港証券取引所へ上場を再申請しています。

中国の倉庫ロボットは日本市場で導入実績がありますか

Hai Roboticsは2026年5月にコクヨの物流拠点への国内初導入を発表しています。ただし公表値の多くは見込み数値であり、稼働後の実績検証が必要です。

日本国内の窓口はどこになりますか

日本国内の販売・導入支援は日本法人の株式会社HAI ROBOTICS JAPAN(東京都大田区、2021年設立)が担っており、東芝インフラシステムズやGaussyなど国内パートナーとの提携を通じて事業を展開しています。

倉庫ロボット企業を評価する際、受注額以外に何を見るべきですか

受注残の大きさだけでなく、粗利率、純損益、営業キャッシュフロー、海外売上比率、保守・ソフトウェア収入の比率まで確認することで、事業としての持続性を判断できます。

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この記事を書いた人

Makoto Yoshikawaのアバター Makoto Yoshikawa 代表取締役

株式会社ロボットワークス 代表取締役。中国・深圳と日本を拠点に、中国ロボット企業の日本市場展開支援、中国フィジカルAI・ロボティクス市場の現地リサーチ、企業訪問・視察企画、ビジネスマッチング、ロボティクス関連製品の販売支援を行う。ヒューマノイドロボット、サービスロボット、AIハードウェア、ロボット部品などの現地動向を継続的に調査し、日本企業向けに実務的な情報発信と事業開発支援を提供している。

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