本記事は2026年9月時点の情報に基づきます。2026年9月19日から20日にかけて実施した現地視察の内容を、参加企業および訪問先との関係に配慮し、企業名・店舗名を伏せたうえで紹介します。
株式会社ロボットワークスは2026年9月19日から20日にかけて、飲食関連事業とスポーツ関連事業を手掛ける日本企業の経営陣2名を対象に、中国・深センで2日間の現地視察を企画・実施しました。目的は、有名企業や最新ロボットを数多く見て回ることではなく、自社の事業をAI・ロボティクスの変化の中でどう捉え直すかを検証することでした。本記事では、視察の設計方法と、飲食・スポーツという2つのテーマで得られた現場の発見を整理します。
訪問先の数ではなく「確かめたい問い」から視察を設計する
深セン視察を企画する際、有名企業への訪問や最新のヒューマノイドロボットの見学が目的になりやすい傾向があります。しかし、視察を新規事業につなげるのであれば、最初に決めるべきなのは訪問先ではなく検証したい問いです。
株式会社ロボットワークスは、中国・深センを拠点に、日本企業向けの市場調査、企業視察の設計・同行、中国企業へのヒアリング、導入検討支援を提供しています。今回も事前の打ち合わせで、経営陣2名が同じ現場を見たうえで帰国後に議論できる状態をつくることを重視し、飲食とスポーツという既存事業を起点に2つの検証テーマを設定しました。
訪問先が決まっていない段階からご相談いただけます。現在の事業課題や新規事業のテーマから、検証すべき仮説と訪問・体験先を設計します。
検証テーマ1:飲食現場で調理ロボットは本当に使われているか
中国では調理ロボットやスマート厨房に関する報道が増えていますが、メーカーのショールームでデモを見るだけでは、その製品が飲食店の現場で実際に役立っているかは分かりません。そこで今回は、調理自動化設備を導入済みの飲食現場を訪れ、客として食事をするだけでなく、厨房の稼働状況をスタッフへ直接確認しました。
現地で確認した内容は次のとおりです。ある店舗では調理ロボットの設備が導入され、電源も入っていましたが、訪問時には実際の調理には使われていませんでした。現場で働くスタッフへの確認では、人間による調理の方が効率が早いため調理ロボットを使わずに放置しているとのことでした。つまり、私たちが実際に食べた料理は人間の調理師が作ったものでした。別の店舗では、調理ロボットが導入されていることは確認できたものの、常時稼働ではなく、混雑する時間帯に限定して使用しているとの説明でした
「ロボットが導入されている」という情報と、「その店舗の料理を日常的にロボットが作っている」という事実は、同じではありません。この違いを現場で確認できたことが、今回の飲食テーマにおける最大の収穫でした。メーカーの導入事例資料だけを見れば1件と数えられる案件でも、実際に現場を訪れることで、稼働時間帯やスタッフの運用方法、既存オペレーションとの相性といった、普及の条件が見えてきます。
どの工程が機械に移るのか、業態別に問いを立て直す
現場を見た後の議論は、「調理ロボットによって料理人がすべていなくなるのか」という単純な問いから、より具体的な内容へと変わっていきました。厨房には食材の投入、計量、加熱、撹拌、味付け、盛り付け、清掃など複数の工程があり、業態によって客から厨房が見えるか、料理人自体が体験価値になっているか、メニュー数やピーク時間の集中度も異なります。
現地での議論では、料理人の仕事がゼロになるとは限らない一方で、食材の投入といったアシスタント的な作業から自動化が進むのではないか、という見方で一致しました。見るべきなのは、ロボットが人をすべて置き換えるかどうかではなく、一つの仕事を構成するどのタスクを機械側へ移せるかです。
実店舗で稼働していない設備を確認できたことも、視察としては重要な情報でした。今回の視察では、中国で調理ロボットが普及しているという結論ではなく、どの業態、どの工程、どの時間帯であれば自動化が成立するのかという、より具体的な問いを持ち帰る結果となりました。
飲食・スポーツに限らず、自社の事業とAI・ロボティクスの接点を検証したい方へ。具体的な訪問企業や製品が未定でもご相談いただけます。
検証テーマ2:スポーツ事業が持つ運動データはフィジカルAI時代の資産になるか
フィジカルAI(具身智能)とは、ロボットが現実世界で物体に触れ、力を加え、失敗と修正を重ねながら動作を学習する技術領域を指します。生成AIの学習には大量のテキスト・画像・動画データが使われてきましたが、フィジカルAIでは、人間が身体をどう動かし、どう力を加えるかという実世界の運動データが重要になります。
今回の参加企業はスポーツ関連事業も展開しており、事前に設定した仮説は、スポーツの現場で生まれる運動データを新しいデータ資産として捉え直せないか、というものでした。特に子どもの運動データは日常的かつ継続的に取得することが容易ではありませんが、スポーツ教室などでは走る、跳ぶ、投げる、バランスを取るといった多様な身体動作が繰り返されています。この環境で取得したデータを、単なる運動記録ではなく、将来的にフィジカルAIやロボットの基盤モデル構築に資する学習データへ発展させられるかを、現地で議論しました。
視察中には、モーションキャプチャで動作データを取得し、シミュレーション上で再学習したうえで別のロボットへ適合させるという開発の流れについても確認しました。人間とロボットでは腕や脚の長さ、関節の可動域が異なるため、人間の動きをそのままコピーすればよいわけではなく、取得、構造化、学習、ロボットへの適合という複数の工程が必要になります。これらを踏まえると、スポーツ事業者がフィジカルAIに関わる方法は、自社がロボットメーカーになることだけではありません。継続的に接点を持つ人や現場から、他社が取得しにくいデータをどう蓄積し、誰がどの目的でどのような権利関係のもとに利用するのかという論点自体が、新規事業のテーマになり得ます。
なお、子どもの身体データを扱う場合は、本人・保護者の同意やプライバシー、データの利用目的・管理方法について慎重な設計が必要です。具体的な事業化を検討する段階では、個人情報保護やデータ利用に関する専門家への確認が欠かせません。
「頭で分かる」ことと「現場で体感する」ことの差
2日間では、飲食とスポーツの2テーマに加えて、自律移動、配送、無人店舗、AIハードウェア、サービスロボットも確認しました。中には、AIによる商品推薦とロボットアームを組み合わせ、人間の販売スタッフが担ってきた工程の多くを自動化する店舗もありました。実際に一連の流れを体験した参加者からは、この業務は人がかなり置き換えられる可能性がある、という趣旨の反応があり、その場で既存の店舗ビジネスがどう変わるかという議論につながりました。
視察の終わりに、参加された経営陣から次のような趣旨の感想がありました。AIによって仕事が置き換えられていくこと自体は、頭では理解していた。しかし、実際に自分の目で見て、現場で人と機械の役割が変わっている様子を体験しなければ、自分の言葉として言語化できなかった、という内容です。ニュースで「AIが仕事を変える」と読むことと、自社が普段関わる現場で「この業務は機械へ移るかもしれない」と体感することの間には、新規事業を検討するうえで無視できない差があります。
深セン視察で株式会社ロボットワークスが支援する範囲
視察を新規事業につなげるには、現地で過ごす数日間だけを設計しても十分ではありません。株式会社ロボットワークスでは、案件の内容に応じて、視察前の課題整理から視察後の商談・PoC検討まで、次の範囲で継続的に支援しています。
| 工程 | 当社が行うこと | お客様が得るもの |
|---|---|---|
| 視察前 | 事業課題のヒアリング、検証すべき仮説の整理、質問項目の設計 | 訪問先が決まっていない段階でも進められる視察の設計図 |
| 視察中 | 仮説に合わせた訪問先・体験先の組み合わせ、現地スタッフへの直接確認、移動中・食事中の議論進行 | メーカー資料だけでは分からない現場の稼働実態 |
| 視察後 | 追加調査、中国企業への追加ヒアリング・商談、製品比較の整理 | 「面白かった」で終わらせず、社内判断に使える論点整理 |
| 継続検討 | PoC設計、OEM・ODMの検討、半年〜1年単位での定点観測 | 仮説を更新し続けるための継続的な現地情報 |
具体的な訪問企業や製品がまだ決まっていない段階でも相談を受け付けています。現在の事業、新規事業のテーマ、社内で感じている課題を伺ったうえで、企業訪問だけでなく、導入済みの店舗、工場、ショールーム、街中で稼働するサービスなどを組み合わせた視察プログラムを設計します。より詳しい支援内容は中国・深センのヒューマノイドロボット現地調査支援、およびサービス内容のページで紹介しています。
AIによる自動化が店舗運営そのものをどう変えうるかは、「AICO Station」ヒューマノイドロボットによる省人化店舗ソリューションの記事でも解説しています。また、中国で生まれる身体データの活用事例は、中国のリアルデータ×AI活用に関する記事にまとめています。
よくある質問
訪問したい中国企業がまだ決まっていなくても相談できますか。
相談いただけます。現在の事業内容や新規事業のテーマ、社内の課題を伺ったうえで、検証すべき仮説と訪問・体験先を設計します。
深セン視察では何人から対応可能ですか。
案件により異なります。今回は経営陣2名での実施でしたが、少人数から複数名まで、目的に応じた規模で設計します。
視察後に中国企業との商談やPoCまで依頼できますか。
対応可能です。視察で関心を持った企業への追加ヒアリングや商談、PoC設計、OEM・ODM検討まで継続して支援します。
まとめ
今回の深セン視察は、飲食現場での調理ロボットの稼働実態と、スポーツ事業が持つ運動データの新しい価値という2つの仮説を、現地で検証する2日間でした。得られたのは唯一の正解ではなく、半年後・1年後に改めて確認すべき、より具体的な問いです。中国・深センのAI・ロボティクスの状況は変化が速く、一度の視察で結論を固定せず、定点観測しながら仮説を更新していくことが重要だと考えています。
深センで新規事業の仮説を検証したい企業の方へ
株式会社ロボットワークスは、中国・深センを拠点に、日本企業向けの市場調査、企業視察の設計・同行、中国企業へのヒアリング、導入検討支援を提供しています。具体的な訪問先や依頼内容が決まっていない段階でもご相談いただけます。

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