ENGINE AI|深セン湾ショールームで確認したPM01・T800の違いと導入条件

ENGINE AI T800の公式製品ビジュアル(左端の別機体はT800と断定しない)

RobotWorks代表・吉川真人は2026年9月21日、深セン湾の深圳湾创新科技中心1階にあるENGINE AIショールームを訪問しました。広いショールームでは、ダンスや格闘技を思わせる動き、ゲームの「昇龍拳」のような動作まで、ロボットの身体の動きを直接見ることができ、動画では分かりにくいサイズ感と迫力を確認できました。担当者は、事前に作られたモーションを特定の条件や指示で呼び出す仕組みも説明していました。本記事は、その訪問で確認した内容をもとに、動きの迫力だけでなく、どこで指示を出したのか、動作の前後に準備があるのか、止まったときに誰がどう復旧するのかを、連続した流れとして整理します。

ENGINE AIは、中国・深センを拠点に人型ロボットなどを開発する企業です。本記事では、会社概要から主要製品、開発環境、製造体制、中国での利用例、価格と日本での検討条件までを整理します。

公式サイトの説明と、RobotWorks代表・吉川真人が2026年9月21日にショールームで確認した内容は区別して扱います。情報確認日:2026年10月24日。

中国ロボット・フィジカルAI市場の全体像を確認したい方へ。比較検討の入口となる入門資料をご案内します。

PM01・T800の導入候補を整理したい方へ。用途に合う機種や供給体制の確認を進めるための、中国ロボット企業・市場調査をご案内しています。

関連する解説

製造体制を知るには、完成した機体だけでなく工場の仕組みも手掛かりになります。ENGINE AI紅花嶺基地の記事では、量産と品質管理の論点を整理しています。本稿の会社概要と合わせて参照してください。

企業訪問では、デモを見るだけでなく導入条件を確認することが大切です。深セン・北京の企業視察記事では、現地で確認した論点を整理しています。自社の視察で何を聞くかを考える参考になります。

個社の製品を業界全体の動きと比べたい方には、展示会の現地レポートも参考になります。WRCの記事では、出展内容から確認した変化を紹介しています。展示と実際の導入を区別しながらお読みください。

目次

ENGINE AIの会社概要

項目内容
ブランドENGINE AI(中国名:众擎机器人)
法人名深圳众擎机器人科技股份有限公司
設立・拠点2023年10月、深セン
創業者・CEO趙同陽(赵同阳)
主な製品T800、PM01、SE01、SA01、JS01(四足)、S2(コンセプト)
主な用途文化・エンターテインメント、商業サービス、交通管理、製造、研究・教育
公式サイトhttps://www.engineai.com.cn/

法人名と設立時期は中国語公式の会社概要に基づきます。以前の資料にある「深圳市众擎机器人科技有限公司」とは表記が異なるため、契約や調達では最新の法人情報と見積書の発行主体を照合してください。

用途を掲げていることと、それぞれで有償導入・継続稼働が成立していることは、分けて読みます。

創業者と沿革:身体を動かす技術から事業化へ

創業者兼CEOの趙同陽氏は、中国の技術媒体・智東西の本人インタビューで、IoT事業を経てロボット開発に取り組んだと説明しています。2019年に四足ロボットの多够机器人を設立し、2020年に小鵬(XPeng)側へ合流してロボット事業会社・鹏行智能の総経理を務め、2023年に退職して众擎を創業しました。智東西の創業者インタビュー

ここから読み取れるのは、足で移動する機械の制御と製造を積み上げてきた経営者が中心にいるという背景です。一方、経歴の長さだけで、今日の製品の完成度や財務の安定性は保証されません。

公式沿革では、2023年10月の設立に続き、2024年7月にSA01、10月にSE01、12月にPM01を発表しています。2026年5月には、深セン・紅花嶺の拠点から最初のT800がラインオフしたと報じられています。発表、展示、製造開始を、同じ意味の「商用化」として並べないことが大切です。中国語公式沿革

主な製品:PM01とT800を同じものとして比較しない

ENGINE AI T800の公式製品ビジュアル(左端の別機体はT800と断定しない)
CES 2026で展示されたENGINE AI T800。写真:ENGINEAI Robotics Technology/PR Newswire(2026年1月7日発表)。出典: https://www.prnewswire.co.uk/news-releases/engineai-robotics-technology-introduces-the-t800-humanoid-robot-at-ces-2026-302655099.html
ENGINE AIのPM01とT800を比較し、製品写真を組み込んだ図解
図:PM01とT800は、機体の特徴に加えて開発権限・標準機能・運用条件を比較する。製品写真を組み込んだ比較図。ENGINE AI公式情報に基づく仕様。写真提供:ENGINEAI Robotics Technology/PR Newswire(2026年1月7日発表)。編集:株式会社ロボットワークス。

製品ラインは役割で分けると理解しやすくなります。SA01は二足の研究・拡張基盤、SE01は全身型の歩行を示すモデル、PM01は研究・展示・二次開発で検討する小型の全身機、T800はより大きな作業プラットフォームです。JS01は四足型で、人型との優劣を単純に比較できません。

PM01:開発者が何を触れるかを確認したいプラットフォーム

PM01の公式英語ページは、全身24自由度と、低レベルのハードウェアインターフェース、学習・実行に関するコード支援を説明しています。関節トルクは英語版と中国語版で異なる値が掲載されているため、本稿では数値を載せません。必要な場合は、見積対象の構成でメーカーの書面を確認してください。PM01公式製品ページ

大学や研究機関が検討する場合、最初の問いは「宙返りができるか」より「研究に必要な制御情報へアクセスできるか」です。サンプルコードがあること、SDKを使えること、学習コードを変更できること、製品へ組み込んで再販売できることは同じ条件ではありません。

T800:全身サイズとエディションの違いを理解する

2026年10月16日更新の中国語公式開発資料では、Developer Editionは25自由度、Pro Editionは本体29自由度に両手の計14自由度を加えた43自由度です。両版の身長は173cm、脚関節の最大ピークトルクは450N・mと記載されています。中国語公式開発仕様

ハンドはPRO版のみの対応で、片手7自由度と触覚センサーが記載されています。自由度の内訳は親指・人差し指・中指の軸で説明されており、「五本の指すべてが独立して動く」という意味ではありません。T800ハンド開発資料

電池には追加確認が必要です。製品紹介の固体電池・4時間という訴求に対して、開発資料は三元系リチウム電池1.22kWh、標準2時間としています。対象構成や測定条件の対応は確認できていないため、見積対象の電池型番と、実作業条件での稼働時間をメーカーに確認します。中国語T800製品ページ

開発環境:ROS2・SDKで何ができるか

中国語の公式開発ポータルには、PM01とT800のROS2インターフェース、Native SDK、可視化アプリの区分が用意されています。これは「開発の入口がある」という具体的な材料です。中国語公式開発ポータル

ただし、使えるAPI、商用ライセンス、学習データ、技術支援の契約まで一律に無料で開放されたとは読めません。関節の位置を指定できることと、荷物を認識して棚へ片付ける完成アプリが付くことは違います。購入後に顧客側で作る部分が、認識、作業計画、既存設備との通信、画面、遠隔監視のどこなのかを明らかにすれば、必要な人員や期間を見積もれます。

量産体制:紅花嶺の製造拠点

2026年5月27日付の深圳特区報は、深セン・紅花嶺の製造拠点について、建築面積約1万2,000㎡、15分に1台をラインオフできる能力、受入検査から出荷までの工程を紹介しています。これらは会社説明に基づく能力値で、記者が年間出荷台数を監査した数字ではありません。深圳特区報(2026年5月27日)

ここから読み取れるのは、試作機を一台ずつ作る段階を超えた供給体制を整えようとしていることです。一方、設計上の供給能力と、年間の有償出荷台数、顧客の検収台数は別の数字です。

工場の工程と量産指標は、別の記事で詳しく整理しています。生産能力と出荷実績を分けて読みたい調達担当者に向いています。本記事では会社全体の理解に絞り、工程の説明は繰り返しません。

中国での利用例:誰が業務を作っているのか

具体例として見たいのが、多倫科技(多伦科技)によるPM01の二次開発です。同社は交通・車両管理のソリューションを扱う中国企業で、2025年12月18日付の投資家説明記録で、南京・江寧で披露した交通指揮ロボットがPM01本体を基に開発されたと説明しています。多倫科技の投資家説明記録

確かめられるのは、汎用の身体に別企業が業務機能を組み合わせた事例です。交通環境のあらゆる判断をロボットへ任せたことや、長期間の無人運用、採算まで確認できたわけではありません。

同じ相手との「3年で2,000台以上」という話も区別が必要です。2026年1月8日の多倫科技の発表では、案件の進捗と市場需要に応じた枠組みの調達意向として説明されています。納入済み実績や売上と読み替えてはいけません。多倫科技の発表(2026年1月8日)

商業施設での利用も公式サイトで紹介されています。深セン・福田区の商業施設「深業上城」には、京東・深業と組んだロボット店員の小売店を開いています。ヘアドライヤーメーカーLaifenの深セン旗艦店では、PM01が髪を乾かすサービスを提供したと説明しています。ENGINE AI公式・店舗ページ

これらは企業の発表で、店舗の売上効果や継続運用の条件は公表されていません。展示・集客の価値と、無人で接客を任せられるかは分けて評価します。受付、展示、巡回などで何を自社開発し、何を既存機能で済ませるか。この切り分けから始める企業調査は、いきなり機体を購入するより判断に役立ちます。

深セン湾のショールームで見たこと

吉川は2026年9月21日、深セン湾の深圳湾创新科技中心1階にあるENGINE AIショールームを訪問しました。吉川の印象では、深セン湾は東京の港区を連想するエリアです(地域の統計的な比較ではなく、現地で受けた雰囲気のたとえです)。

印象に残ったのは、広いショールームでロボットの身体の動きを見られることでした。ダンスや格闘技を思わせる動き、ゲームの「昇龍拳」のような動作まであり、動画では分かりにくいサイズ感と迫力を感じられます。各動作の正式名称や対応する機種・版を確認した仕様説明ではありません。

ここで重要だったのは、「全自動」という言葉の中に複数の仕組みが含まれていた点です。担当者は、事前に作られたモーションを特定の条件や指示で呼び出す仕組みも説明していました。滑らかに歩く、決められた動きをすることだけで、その場の状況を理解して未知の仕事を自律実行しているとは評価できません。

現場で機体を見る価値は、どこで指示を出したのか、動作の前後に準備があるのか、止まったときに誰がどう復旧するのかを、連続した流れとして確認できる点にあります。なお、本記事は紅花嶺工場を吉川が視察済みであるとは記載していません。

「生成動画では?」という疑いを話題に変えた発信

2025年12月のT800の映像には、動きが滑らかすぎてCGではないかという反応がありました。同社は撮影の舞台裏を公開し、12月6日には防具を着けた趙CEOがT800の蹴りを受ける動画を公開しています。雷達財経(2025年12月10日、搜狐掲載)/澎湃新聞(2025年12月8日)

技術の説明を、見た人が誰かに話したくなる出来事へ変える力は、この会社の特徴です。ただし、追加映像が出たことで、全カットに編集がないことや、ロボットが相手を自律認識して攻撃を判断したことまで証明されたわけではありません。顧客として評価するなら、動作条件、安全距離、操作者、繰り返し試験を確認し、人が蹴りを受ける演出をまねしないことが大切です。

ENGINE AI固有の論点:運用・競合・外部条件

以下は確認した公開情報を基にしたRobotWorksの分析です。

  • 一つの万能機ではなく、研究用基盤、小型機、大型機、四足機を分ける構成。比較は機体、ソフトウェア、開発権限、支援をセットで行う。
  • 価格差の理由を、サイズだけでなく、計算機、手、センサー、ライセンス、保守まで分解する。安い構成が研究目的に足りなければ、総額は上がる。
  • 開発ポータルと多倫科技の事例は、開発者・インテグレーターを介する経路があることを示す。誰が契約し、誰が障害に対応するかを具体化する。
  • 身体能力の映像は認知の入口になる。業務担当者が次に必要とするのは、対象物、試験条件、介入回数、保守方法。

顧客は、制御研究を行う大学・開発企業、来場者へ体験を提供する展示・店舗、特定業務を任せたい事業者に分かれます。研究側は触れる範囲、店舗側は安定稼働、作業側は処理品質を重視します。

競争相手は他の人型メーカーだけではありません。研究には別の開発機、案内には画面とスタッフ、搬送にはAMR、固定作業にはロボットアームという代替手段があります。

自社の能力として追うべきは、身体制御、開発環境、製造拠点を一社で見られる点です。一方、顧客ごとの稼働率、保証費用、継続収益は公開情報からは分かりません。

日本で導入を判断する際には、制度面では国内の産業支援や政府関係者へのデモが日本での利用許可を意味しないこと、経済面では供給能力や調達意向と売上・入金・顧客の投資回収は別であること、社会面では人の形をした機械が接近や接触への期待を高めること、技術面では製品更新が速いほど版の管理が重要になることを押さえます。

創業者は2026年1月20日付の人民日報海外版で、家庭で役に立ち、人と関わるロボットへの将来像を語っています。これは経営者の方向性であり、家庭用の製品がすでに普及したという実績ではありません。人民日報海外版(2026年1月20日)

価格と調達の確認事項

RobotWorksが2026年10月時点で確認したENGINE AIの海外向け販売価格は、次のとおりです。

機種・エディション海外向け販売価格
T800 オープンソース/開発版54,000米ドル
T800 Pro63,000米ドル
PM0140,000米ドル

これは機体の海外向け販売価格で、日本での購入総額ではありません。輸送費、保険、輸入時の関税・消費税、バッテリーの輸送書類、国内での立ち上げ、保守・保証の条件は含まれておらず、構成と取引条件によって変わります。価格は改定されることがあるため、購入の判断には正式な見積書で、機種・エディション、税・輸送の条件、保証範囲を確認してください。

比較の際には、次の範囲を揃えることを勧めます。

  • 対象機種とエディション、含まれるハンド・センサー・計算機
  • SDK、サンプル、学習環境、技術支援の範囲
  • 輸送、保険、輸入時の手続き、国内搬送
  • 予備電池、充電器、交換部品、初期セットアップ
  • 日本語対応の要否、操作者の研修、保守窓口
  • 故障時の返送条件と、待機中に使えない期間

本記事では、個別の割引や仕入れ条件は掲載しません。代理権、納期、保証の内容は、確認できた範囲で個別にご案内します。

日本で使う場合の確認項目

重量のある動く機械を、人と同じ場所で使うことになります。非常停止がどこにあり、通信が切れたらどう止まり、転倒する範囲へ人が入らないか。展示でも研究でも、これらは運用設計に含めます。本記事は個別製品の日本での法令適合や安全認証を保証するものではありません。

開発用ロボットでは、自社が書いたソフトウェアとメーカー提供部分の境界が重要です。問い合わせ窓口、対応言語、ログの取り方、サポート対象のバージョン、改造した場合の保証範囲を契約前に整理します。

受入試験では、立ち上がることだけを合格にしません。研究なら必要なAPIへ接続できること、展示なら決めた時間内に準備・動作・終了できること、作業用途なら対象物と環境を固定した試験を考えます。試験の回数、許容する失敗、人の介入、復旧時間を先に決めます。

他社との比較と、現地視察で確認したいこと

UBTECH、Unitree、AgiBot、Galbotなども比較候補です。ただし、本体の形、開発環境、用途、販売単位が異なるため、企業名を並べた点数表では判断しにくくなります。「身体性能の研究をしたいのか」「観客に見せたいのか」「特定の作業を完了させたいのか」を分けると、比較相手も質問も明確になります。

視察で準備したい質問の例は次のとおりです。

  1. 今見ている実機の型番、エディション、ソフトウェア版は何か。
  2. デモ動作のどこを人が指示し、どこをロボットが判断しているか。
  3. 自社の対象物や作業条件に近い試験を見られるか。
  4. 二次開発でアクセスできる情報と、変更できない部分は何か。
  5. 同じ構成の出荷実績、検収条件、保守部品の供給条件はどうか。
  6. 日本で利用する場合、販売主体とサポート主体はどこか。

ENGINE AIの拠点は深センにあり、ショールームや商業施設での利用例を、他の深セン企業とあわせて確認できます。訪問の受入可否や、開発区画へ入れるかは個別の確認が必要です。

よくある質問

ENGINE AIは中国のどこにある会社ですか?

深センを拠点とするロボット企業です。訪問時は本社、ショールーム、工場を区別し、最新の住所を確認してください。

PM01とT800はどちらが優れていますか?

一律には決められません。開発対象、必要なサイズ、手先の構成、開放インターフェース、運用場所で選び方が変わります。

格闘や宙返りができるなら、工場でもすぐ働けますか?

それだけでは判断できません。対象物の認識・把持、作業精度、設備連携、安全、連続稼働を個別に確かめます。

海外向け販売価格で日本に導入できますか?

本文の価格は機体の海外向け販売価格です。輸送、輸入時の税、保守・保証などを含む総額は、正式な見積書で確認してください。

メーカーへ直接問い合わせてもよいですか?

もちろん選択肢です。RobotWorksの支援は、比較項目の設計、現地情報の確認、日本側の判断材料づくりにあります。調査や視察だけを切り出して検討することもできます。

まとめ:注目すべきは動きの先にある開発と運用

ENGINE AIは、高動態の人型ロボットを入口に、開発プラットフォームと製造体制を広げている企業です。日本企業にとっては、研究、展示、事業開発のいずれでも比較対象になり得ます。

一方、用途に合うかどうかは動画だけでは決まりません。機種と構成、開発範囲、実績、納品後の体制を揃えて確認する必要があります。中国ロボット企業の比較や確認事項の整理から始めたい方は、ご相談ください。

月次レポートでは、ENGINE AIのように仕様の更新が速い企業の動きを、他社と並べて整理しています。

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この記事を書いた人

Makoto Yoshikawaのアバター Makoto Yoshikawa 代表取締役

株式会社ロボットワークス 代表取締役。中国・深圳と日本を拠点に、中国フィジカルAI・ロボット企業の現地調査・視察・導入支援を行う。

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